雪月繚乱〜少年博士と醜悪な魔物〜

「それがどうした。そんなもの、ただの民話ではないのか? 私が云ったのは、お前がなにを私に云いたいかという――」

「国のはじまり、大陸に降り立った神は……ひとりだけやったんです。4人おったんは人間の方やった」

 突拍子もないイシャナの言葉に、月夜は柳眉を寄せた。

「信じられへんかも知れへん…けど、この大陸がまだいっこの土地だった昔、ある理由で人界に降りた神が、同時に3人の人間に子を孕まされたんや」

「そ、そのような戯言など…」

 月夜がたまらず反論するのを訊かず、イシャナは話し続けた。

「そして誕生した子は、成長して国の王となった。その名を……東の国ナーガの敖広(ごうこう)、西の国バロンの白(びゃく)、北の国グィシュアの玄天上(げんてんじょう)」

「いい加減にしろ! いくらナーガの人間だとて口が過ぎるぞ! しかもバロンやグィシュアまで愚弄する気かお前はっ」

「訊いたんはそちらやないですか。こんな状況で戯れ言を云う余裕が俺にあると思いますか?」

 とは云いながら、イシャナ自身に怯えや切迫した様子は感じられない。
 だからといって、彼にそんな嘘をつく理由があるとも思えない。

「だ、だいたい、神が人間の…同時に3人の子を孕むなど…! それに、神は男なのでは…」

「神に人間の云う常識はない。男女の別もないんです……それともう一人。南の国ガルナの朱雀」

「やめろ!」

 恐れていた言葉をきかされ、月夜は叫んでいた。
 声に反応した阿修羅がイシャナの肩に噛みついた。

「か、神は4人の王をこの地にもたらした……けど末に生まれた朱雀は他の3人とちごて、無理に孕まされたんやなかったんや!」