「月夜様、ご無事ですか!」
騒ぎに気づいた見張りの者が扉の向こうで叫んだ。
月夜は自分が無事であることを告げ、騒がぬようにさせた。
いまの阿修羅には妖力がほとんどない。
よほどの術者でもない限りはその存在を気取られる心配はないだろう。
「お前もナーガの術者であるならわかるであろうが、それでもその牙で喉元を噛みちぎるくらい雑作もないことだ」
阿修羅の剥き出しの牙から、イシャナの首によだれが落ちた。
低く唸りをあげる式に怯えているのか、それともあきらめているのか、彼はピクリとも動かない。
ややもすると、まぶたを閉じて、ああとつぶやいた。
「思ったとおりや……月夜様の式は魔属性でしたんや」
のんきなことを云うイシャナを、月夜はいぶかしんだ。
この状況でまだ余裕をみせる人間が、普通であるわけがない。
自分が死ぬか生きるかの瀬戸際で、敵の式の属性を気にしてなにになるという?
「お前は馬鹿なのか? それとも本当は……」
イシャナは深い色の瞳を月夜に向けた。
「ここまでして、月夜様が手に入れるんは、どんなもんですやろな……」
「先にも云ったが、帝のために私は命をかける。そのために手に入れるものなど、私にとっては些末なものだ」
「……ホンマに貴方は一生懸命やわ」
困ったような、戸惑いの表情が一変し、イシャナは顔色をなくした。
「どうしても貴方を止められないんやったら……覚悟決めなあきまへんやろな」
「命が惜しいなら、真実を話せ」
「後悔するかも…知れへんですよ?」
阿修羅が彼を威嚇した。
「わかりましたて」
阿修羅の鼻先を押し退けて、イシャナは話しはじめた。
騒ぎに気づいた見張りの者が扉の向こうで叫んだ。
月夜は自分が無事であることを告げ、騒がぬようにさせた。
いまの阿修羅には妖力がほとんどない。
よほどの術者でもない限りはその存在を気取られる心配はないだろう。
「お前もナーガの術者であるならわかるであろうが、それでもその牙で喉元を噛みちぎるくらい雑作もないことだ」
阿修羅の剥き出しの牙から、イシャナの首によだれが落ちた。
低く唸りをあげる式に怯えているのか、それともあきらめているのか、彼はピクリとも動かない。
ややもすると、まぶたを閉じて、ああとつぶやいた。
「思ったとおりや……月夜様の式は魔属性でしたんや」
のんきなことを云うイシャナを、月夜はいぶかしんだ。
この状況でまだ余裕をみせる人間が、普通であるわけがない。
自分が死ぬか生きるかの瀬戸際で、敵の式の属性を気にしてなにになるという?
「お前は馬鹿なのか? それとも本当は……」
イシャナは深い色の瞳を月夜に向けた。
「ここまでして、月夜様が手に入れるんは、どんなもんですやろな……」
「先にも云ったが、帝のために私は命をかける。そのために手に入れるものなど、私にとっては些末なものだ」
「……ホンマに貴方は一生懸命やわ」
困ったような、戸惑いの表情が一変し、イシャナは顔色をなくした。
「どうしても貴方を止められないんやったら……覚悟決めなあきまへんやろな」
「命が惜しいなら、真実を話せ」
「後悔するかも…知れへんですよ?」
阿修羅が彼を威嚇した。
「わかりましたて」
阿修羅の鼻先を押し退けて、イシャナは話しはじめた。

