雪月繚乱〜少年博士と醜悪な魔物〜

――信じられない…どういうことだ? なぜ人間のボクが、魔物などと一緒に…?

 想像もしなかったことに混乱をきたした月夜は、そのまま意識を失った。

「できることなら、お前をこちら側にかかわらせたくはなかった…それができないことは、わかっていたが…な」

 虚しい雪のつぶやきは、誰の耳にも届くことはなかった。



 ◇ ◇ ◇



 意識を取り戻した月夜は、今いる場所がどこであるかすぐに気づいた。
 式を得るために泊まり込んだ、あの千年木の小屋だ。
 急いで寝台から立ち上がると、外への扉を力任せに開いた。
 そこにいてくれると思ったのだ。
 自分を慕ってついてきてくれた彼が。
 己の身を挺して守ってくれた…。

「なぜ…ボクなんかのために…?」

 月夜は、あの刻のように待っていてはくれなかった阿修羅を想い、ガクリと膝を折った。
 地に伏して肩を震わせる。

「…ごめん、阿修羅…ボクが不甲斐ないばかりに…っ」

 嗚咽をもらし、自分がどんな姿でいるのかにも気づかず、月夜は泣き続けた。
 式を失ったからではない。
 最初は厭わしく思っていた闇の精霊だったが、いつも心の近くに寄り添ってくれた阿修羅に、いつしか月夜は特別な感情を抱いていた。
 そのことに、いまさらながら気づかされる。
 本当にもう、彼は消えてしまったのだろうか――?

「月夜、なぜ泣いている…」

 涙で濡れた顔を上げると、人間の姿で現れた雪に衣をかけられた。
 云われたことに一瞬戸惑ったが、自分がなにも身につけていないことを知ると、慌てて袷をとじる。
 そして雪からも顔を逸らした。

「な、泣いてない…」

 明白な嘘に、雪の目が細められた。