「かわいい…ということだ」
額に雪のくちびるが触れ、一瞬顔が熱くなる。
だが次の瞬間ハッとして、月夜は眉を吊り上げた。
「それ、誉め言葉じゃないだろっ!」
雪はわざとらしく、そっぽを向いた。
「いつまでもボクをバカにして、なにが面白いんだっ。もう、絶対強くなってやる……そのために、わざわざこんなところまできてるんだから!」
走り出した月夜は、振り返ると雪に向かい、両手を重ねて叫ぶ。
「叉邏朱!」
召喚された、美しい大鳥の姿をした精霊が翼をひとふりすれば、強風に煽られ何者も立ってはいられない。
しかしそれは常人の話。
地面が割れ、岩が持ち上がろうとも、その中で余裕を見せられるのは彼だからできることだ。
「月……もっと集中しろ。それでは簡単に破られる」
雪のたったひと睨みが、月夜に重圧を与えた。
叉邏朱の動きが鈍り、何度か羽ばたきをしただけでおとなしくなってしまう。
困ったようにキュウと鳴くと、光の粒子と化して消えてしまった。
「くそっ……まだだ!」
月夜は心でその名を呼んだ。
「にゃおおおおん!」
なんとも気の抜けるような撫で声が空に響き渡る。
瞬時に降って湧いたのは、四つ足の獣の姿をした精霊だった。
馬よりも大きい桃色の巨体が、ズシンと雪の前に立ちはだかる。
正面では牙を剥きながら、しかし尻尾はぱたぱたと左右に揺れた。
「……阿修羅。お前、俺に牙を向ける気か」
確かに、阿修羅の主はいまだ雪のはずなのだ。
だが、彼は雪の命で月夜に従っているわけだから、月夜が望むことにも忠実でなくてはならない。
本来ならそこに矛盾が生まれるわけだが、雪の分身である阿修羅は、なにより己に正直だった。
額に雪のくちびるが触れ、一瞬顔が熱くなる。
だが次の瞬間ハッとして、月夜は眉を吊り上げた。
「それ、誉め言葉じゃないだろっ!」
雪はわざとらしく、そっぽを向いた。
「いつまでもボクをバカにして、なにが面白いんだっ。もう、絶対強くなってやる……そのために、わざわざこんなところまできてるんだから!」
走り出した月夜は、振り返ると雪に向かい、両手を重ねて叫ぶ。
「叉邏朱!」
召喚された、美しい大鳥の姿をした精霊が翼をひとふりすれば、強風に煽られ何者も立ってはいられない。
しかしそれは常人の話。
地面が割れ、岩が持ち上がろうとも、その中で余裕を見せられるのは彼だからできることだ。
「月……もっと集中しろ。それでは簡単に破られる」
雪のたったひと睨みが、月夜に重圧を与えた。
叉邏朱の動きが鈍り、何度か羽ばたきをしただけでおとなしくなってしまう。
困ったようにキュウと鳴くと、光の粒子と化して消えてしまった。
「くそっ……まだだ!」
月夜は心でその名を呼んだ。
「にゃおおおおん!」
なんとも気の抜けるような撫で声が空に響き渡る。
瞬時に降って湧いたのは、四つ足の獣の姿をした精霊だった。
馬よりも大きい桃色の巨体が、ズシンと雪の前に立ちはだかる。
正面では牙を剥きながら、しかし尻尾はぱたぱたと左右に揺れた。
「……阿修羅。お前、俺に牙を向ける気か」
確かに、阿修羅の主はいまだ雪のはずなのだ。
だが、彼は雪の命で月夜に従っているわけだから、月夜が望むことにも忠実でなくてはならない。
本来ならそこに矛盾が生まれるわけだが、雪の分身である阿修羅は、なにより己に正直だった。

