須佐乃袁が消滅し、神の力のほとんどが失われてから、滅多にガルナの人間が近寄ることもなくなった千年木の小屋。
そこでは誰にも見つからずに、なんでもしたいようにできた。
神山からおりてくる神である雪と、ガルナからのぼっていく半神の月夜。
二人はたびたび、この場所で逢っていたのだ。
「いつまでそんな顔をしている。あの帝釈天というのは、口がうまいことで知れている。お前くらいでは当然、太刀打ちなどできない相手だ」
彼はこれでも自分を慰めようとしているつもりなのだとわかってはいたが、ますます気分は落ち込んだ。
「こんなことじゃ……ボクはお荷物にしかならない。そりゃ、半神でしかないボクにはもともとなんの力もないけど……せめて、貴方の重荷にはなりたくないのに――」
こうべを垂れた月夜に、雪がほんの刹那目を丸くする。
そしておもむろに黄色い髪を掻き回した。
「お前が荷物? 気づいていないようだが……」
なにか云いかけた雪を、月夜はぐちゃぐちゃの頭で見上げる。
「……なんだ?」
「いや……お前にそんなしおらしいことを云われるとは、なにか起きる前触れかと……」
「なに人を天変地異みたいに云って――」
憤慨した月夜が振り上げた腕を、雪の手があっさりと受け止める。
何年経っても、力では彼にかなわない。
相手は神なのだから、半神の月夜に優るものなどあるわけがないのだが。
それが腹立たしかったし、誇らしくもあった。
「お前はやっぱり面白いな……」
そう云われて、月夜は戸惑った。
帝釈天の云うとおり、これが誉め言葉なら、雪は自分を少なくとも好意的に見てくれているのだろうか?
「その面白い…って、どういう意味だ…」
雪の表情が優しげに見えた。
そこでは誰にも見つからずに、なんでもしたいようにできた。
神山からおりてくる神である雪と、ガルナからのぼっていく半神の月夜。
二人はたびたび、この場所で逢っていたのだ。
「いつまでそんな顔をしている。あの帝釈天というのは、口がうまいことで知れている。お前くらいでは当然、太刀打ちなどできない相手だ」
彼はこれでも自分を慰めようとしているつもりなのだとわかってはいたが、ますます気分は落ち込んだ。
「こんなことじゃ……ボクはお荷物にしかならない。そりゃ、半神でしかないボクにはもともとなんの力もないけど……せめて、貴方の重荷にはなりたくないのに――」
こうべを垂れた月夜に、雪がほんの刹那目を丸くする。
そしておもむろに黄色い髪を掻き回した。
「お前が荷物? 気づいていないようだが……」
なにか云いかけた雪を、月夜はぐちゃぐちゃの頭で見上げる。
「……なんだ?」
「いや……お前にそんなしおらしいことを云われるとは、なにか起きる前触れかと……」
「なに人を天変地異みたいに云って――」
憤慨した月夜が振り上げた腕を、雪の手があっさりと受け止める。
何年経っても、力では彼にかなわない。
相手は神なのだから、半神の月夜に優るものなどあるわけがないのだが。
それが腹立たしかったし、誇らしくもあった。
「お前はやっぱり面白いな……」
そう云われて、月夜は戸惑った。
帝釈天の云うとおり、これが誉め言葉なら、雪は自分を少なくとも好意的に見てくれているのだろうか?
「その面白い…って、どういう意味だ…」
雪の表情が優しげに見えた。

