招かれた謁見の間は、高く吹き抜けた天井や壁に、美しい獣の絵が、今にも迫ってきそうな迫力で描かれていた。
「よう参られた、ガルナの月読よ」
ナーガ式に低頭した月夜の少し高い場所で、ナーガの女王が玉座についた。
その声は、先に訊いたそれと変わらぬ威厳のある美しい旋律。
キノエよりも言葉が流暢にきこえるのは、ナーガの独特な云いまわしと音調が薄いからだ。
王宮で言葉を交わした人間はわずかだが、すべての臣下がイシャナと同じしゃべり方ではないようだった。
「ナーガ王におかれましては――」
「月読……いや月夜、と呼んでもええか?」
「え、あ…はい」
女王は満足げに頷くと、玉座でひとつ身動いでみせた。
「キノエに訊いた。着いた早々思わぬ歓迎を受けたようやな……なんぞ失礼はなかったか?」
「確かに、驚かされました。しかし、久しぶりに息災とわかり、安堵いたしました」
月夜はわずかに頭をあげ、頬を緩めた。
「月夜も息災のようでなによりや。ガルナ国は……その後変わらぬか?」
女王には、神の侵攻のすべてを説明している訳ではなかった。
ガルナで起きたことは、事実のほとんどを強大な魔物による被害としたのだ。
神が神を奪いに来たなど、あまりに突飛すぎる。
それよりも、魔物の存在の方がナーガにとって、より説得力がある。
だがそれも、結局は建て前に過ぎない。
帝釈天が、どうしてイシャナを操るに至ったかを密かに探ってみたが、その関わりを知ることはできなかった。
イシャナが単独で帝釈天と契約を交わしたのか、あるいはそこに女王が関わっていたのか。
後者なら、ガルナで本当は何があったのか、女王は知っているはず。
「はい。その後も変わりなく――」
女王の言葉を、わずかも訊き漏らすことはできない。
「よう参られた、ガルナの月読よ」
ナーガ式に低頭した月夜の少し高い場所で、ナーガの女王が玉座についた。
その声は、先に訊いたそれと変わらぬ威厳のある美しい旋律。
キノエよりも言葉が流暢にきこえるのは、ナーガの独特な云いまわしと音調が薄いからだ。
王宮で言葉を交わした人間はわずかだが、すべての臣下がイシャナと同じしゃべり方ではないようだった。
「ナーガ王におかれましては――」
「月読……いや月夜、と呼んでもええか?」
「え、あ…はい」
女王は満足げに頷くと、玉座でひとつ身動いでみせた。
「キノエに訊いた。着いた早々思わぬ歓迎を受けたようやな……なんぞ失礼はなかったか?」
「確かに、驚かされました。しかし、久しぶりに息災とわかり、安堵いたしました」
月夜はわずかに頭をあげ、頬を緩めた。
「月夜も息災のようでなによりや。ガルナ国は……その後変わらぬか?」
女王には、神の侵攻のすべてを説明している訳ではなかった。
ガルナで起きたことは、事実のほとんどを強大な魔物による被害としたのだ。
神が神を奪いに来たなど、あまりに突飛すぎる。
それよりも、魔物の存在の方がナーガにとって、より説得力がある。
だがそれも、結局は建て前に過ぎない。
帝釈天が、どうしてイシャナを操るに至ったかを密かに探ってみたが、その関わりを知ることはできなかった。
イシャナが単独で帝釈天と契約を交わしたのか、あるいはそこに女王が関わっていたのか。
後者なら、ガルナで本当は何があったのか、女王は知っているはず。
「はい。その後も変わりなく――」
女王の言葉を、わずかも訊き漏らすことはできない。

