沸き上がった不安が消えることはなく、月夜は浅い眠りから早く目を覚ました。
寝台の上で朦朧としながら、ここがすでにナーガの中枢であることをぼんやりと自覚する。
謁見のために身なりを整え、気持ちを引き締めた月夜は、キノエが呼びにくるのを今かと待っていた。
いささか早く準備を終えたせいか、それまでの刻が悠久にも錯覚した。
部屋の大きな窓から見渡せる、目下の街並みに陽が射し込むと、急に活気が満ちてくる。
ガルナにいた頃は、こんなにも近く、民の生活を目にすることはなかった。
宮は民にとり、天上の世界と同じ。
そこには神が住み、遥か地上へ采配をふるっている。
ナーガでは、神はより民に近いところで采配をふるう。
――いや、神という存在自体、民の中に自然と溶け込んでいるのかもしれない。
これは須佐乃袁が描いた神のいない世界。
しかし神は消えた訳ではない。
神は人の中に息づいている。
「神と同化した国は繁栄した……神を失った国は、まるで生まれたばかりで放り出された赤子同然」
そんな国を委ねることに抵抗がないわけはない。
今ならガルナは簡単に滅ぼしてしまえる。
それを防いでいるのは、神の遺した威光のみ。
それが崩れないうちに、ナーガとの同盟を結んでしまいたかった。
――イシャナとの繋がりが、一縷の望み。
今はまだ幼い彼の存在を利用するようで心苦しくはあった。
それでも――。
「お前なら、それを盾に見返りでもねだりそうだが……それでいい、と云ってくれる。だろ?」
不思議なくらい、月夜にはイシャナが理解できるような気がした。
魂の繋がりがそうさせるのか、それとも彼が信頼するに足る存在となったからか、月夜にはわからなかった。
寝台の上で朦朧としながら、ここがすでにナーガの中枢であることをぼんやりと自覚する。
謁見のために身なりを整え、気持ちを引き締めた月夜は、キノエが呼びにくるのを今かと待っていた。
いささか早く準備を終えたせいか、それまでの刻が悠久にも錯覚した。
部屋の大きな窓から見渡せる、目下の街並みに陽が射し込むと、急に活気が満ちてくる。
ガルナにいた頃は、こんなにも近く、民の生活を目にすることはなかった。
宮は民にとり、天上の世界と同じ。
そこには神が住み、遥か地上へ采配をふるっている。
ナーガでは、神はより民に近いところで采配をふるう。
――いや、神という存在自体、民の中に自然と溶け込んでいるのかもしれない。
これは須佐乃袁が描いた神のいない世界。
しかし神は消えた訳ではない。
神は人の中に息づいている。
「神と同化した国は繁栄した……神を失った国は、まるで生まれたばかりで放り出された赤子同然」
そんな国を委ねることに抵抗がないわけはない。
今ならガルナは簡単に滅ぼしてしまえる。
それを防いでいるのは、神の遺した威光のみ。
それが崩れないうちに、ナーガとの同盟を結んでしまいたかった。
――イシャナとの繋がりが、一縷の望み。
今はまだ幼い彼の存在を利用するようで心苦しくはあった。
それでも――。
「お前なら、それを盾に見返りでもねだりそうだが……それでいい、と云ってくれる。だろ?」
不思議なくらい、月夜にはイシャナが理解できるような気がした。
魂の繋がりがそうさせるのか、それとも彼が信頼するに足る存在となったからか、月夜にはわからなかった。

