「…月読殿はこの国をどれだけ知ってはります? どこの国かて、光があれば闇があるもの。このナーガはそれこそ永う……ガルナにも、あるんとちゃいますか? そない、すぐにはどうにもできんことと云うものが」
つまり、いまだ畏れているのだ。
イシャナが魔物として覚醒することを。
「イシャナは……この国を救いたいがために、たったひとりでガルナに赴いたんです……なのに、王は畏れなどに屈して、イシャナを蔑ろにされるのか……」
これでは何のためにイシャナは戻ってきたのだ?
月夜の魂の輝きから生まれた、我が身の分身。
今度こそ幸せになれると信じて送り届けた自分が愚かに感じた。
「蔑ろやなんて…そないなことありまへんよ。王かてこの国の行く末を憂いておられると同様に、御子様を心配されてはるのは確かです」
「しかし、なら…なぜお逢いにならないのですか? イシャナは魔物にはならない…それを信じていただけたはずでは……」
イシャナを連れて来た月夜を、ナーガでは最初、ガルナのくわだてかと警戒したようだ。
当然だが、何しろガルナは他国との関わりを一切持たない。
情報も少なく、唯一わかっているのは、神の強い加護によって永らえてきた小国の一族というのみ。
どんな大国の侵攻も退けた、謎多き強国の使者を受け入れるには、様々な制約が必要であっただろう。
「私がこんなことを云うのは過ぎたことだとわかってはいます。ですが、少なくともイシャナがどういう立場だったか、それをしっていながら、見過ごすことはできない。私を信用して受け入れて下さったことには感謝します、だからこそ――」
突然キノエが深々と低頭した。
月夜は二の句がつげなくなる。
室内が、水をうったように静まり返った。
つまり、いまだ畏れているのだ。
イシャナが魔物として覚醒することを。
「イシャナは……この国を救いたいがために、たったひとりでガルナに赴いたんです……なのに、王は畏れなどに屈して、イシャナを蔑ろにされるのか……」
これでは何のためにイシャナは戻ってきたのだ?
月夜の魂の輝きから生まれた、我が身の分身。
今度こそ幸せになれると信じて送り届けた自分が愚かに感じた。
「蔑ろやなんて…そないなことありまへんよ。王かてこの国の行く末を憂いておられると同様に、御子様を心配されてはるのは確かです」
「しかし、なら…なぜお逢いにならないのですか? イシャナは魔物にはならない…それを信じていただけたはずでは……」
イシャナを連れて来た月夜を、ナーガでは最初、ガルナのくわだてかと警戒したようだ。
当然だが、何しろガルナは他国との関わりを一切持たない。
情報も少なく、唯一わかっているのは、神の強い加護によって永らえてきた小国の一族というのみ。
どんな大国の侵攻も退けた、謎多き強国の使者を受け入れるには、様々な制約が必要であっただろう。
「私がこんなことを云うのは過ぎたことだとわかってはいます。ですが、少なくともイシャナがどういう立場だったか、それをしっていながら、見過ごすことはできない。私を信用して受け入れて下さったことには感謝します、だからこそ――」
突然キノエが深々と低頭した。
月夜は二の句がつげなくなる。
室内が、水をうったように静まり返った。

