「遠いところ、ようきはりました……ガルナの月読殿」
耳馴染みのある音調に、月夜はわずかばかりむず痒い気分を味わった。
姿は女性で、イシャナとは正反対の上品な物腰だが、しゃべり方がまんま彼なのだ。
同じ蒼白の髪は綺麗に結い上げられ、雅な髪飾りで彩られている。
額の分け目には宝石が輝き、耳飾りに首飾り、その身に纏うものも、見れば最上級のしつらえがほどこしてある。
――相変わらず煌びやかな装いだな、この国の女性は。
先に訪れた刻も、月夜はそう思っていた。
質素なガルナの宮とは、天地ほどの差がある。
大国とはこういうものなのかもしれない。
着飾った女性たちは、確かに美しい。
それがそれぞれの身分を示す文化でもある。
月夜はあらためて自分を出迎えてくれた、女王の側仕えに目を向けた。
「わざわざのお出迎えありがとうございます。こんなに早くお目通りが叶うとは思わず、少し気を緩めておりました」
王都についてすぐ、月夜は王宮に謁見を申し出たが、翌朝に呼ばれるものと予想した。
すでに辺りは夜の帳がおりていたのだ。まさかこんな刻、女王が一介の使者などにわざわざ急ぎ逢われる理由はないと思っていた。
しかも闇に紛れて、裏門から叉邏朱ごと迎え入れられたのだ。
月夜は、そこに疑う余地もないまま王宮を訪れた。
「こちらもいろいろと準備しとりましたんですよ。けどすんまへんでしたなぁ、裏門からやなんてお願いしてもうて…」
側仕えは優雅に笑みをうかべ、両手を組んで詫びの挨拶をした。
月夜はとんでもないと返したが、彼女はますます笑みを深めた。
「先にお逢いしたんは、ホンマちょっとの間でしたけど。せやけどよう覚えてます…こないな麗しい殿方を見たんは、はじめてやったものやから…」
彼女ははにかむ仕草を見せた。
耳馴染みのある音調に、月夜はわずかばかりむず痒い気分を味わった。
姿は女性で、イシャナとは正反対の上品な物腰だが、しゃべり方がまんま彼なのだ。
同じ蒼白の髪は綺麗に結い上げられ、雅な髪飾りで彩られている。
額の分け目には宝石が輝き、耳飾りに首飾り、その身に纏うものも、見れば最上級のしつらえがほどこしてある。
――相変わらず煌びやかな装いだな、この国の女性は。
先に訪れた刻も、月夜はそう思っていた。
質素なガルナの宮とは、天地ほどの差がある。
大国とはこういうものなのかもしれない。
着飾った女性たちは、確かに美しい。
それがそれぞれの身分を示す文化でもある。
月夜はあらためて自分を出迎えてくれた、女王の側仕えに目を向けた。
「わざわざのお出迎えありがとうございます。こんなに早くお目通りが叶うとは思わず、少し気を緩めておりました」
王都についてすぐ、月夜は王宮に謁見を申し出たが、翌朝に呼ばれるものと予想した。
すでに辺りは夜の帳がおりていたのだ。まさかこんな刻、女王が一介の使者などにわざわざ急ぎ逢われる理由はないと思っていた。
しかも闇に紛れて、裏門から叉邏朱ごと迎え入れられたのだ。
月夜は、そこに疑う余地もないまま王宮を訪れた。
「こちらもいろいろと準備しとりましたんですよ。けどすんまへんでしたなぁ、裏門からやなんてお願いしてもうて…」
側仕えは優雅に笑みをうかべ、両手を組んで詫びの挨拶をした。
月夜はとんでもないと返したが、彼女はますます笑みを深めた。
「先にお逢いしたんは、ホンマちょっとの間でしたけど。せやけどよう覚えてます…こないな麗しい殿方を見たんは、はじめてやったものやから…」
彼女ははにかむ仕草を見せた。

