「…怖れることはない。力を抜いて、すべてを俺に委ねろ」
耳許でささやかれる甘やかな旋律に、緊張が緩み力がほどけていく。
――そうだ。自ら望んだことだ。ボクが信じなければ、彼を受け入れられない…。
二人の姿が自然とひとつに溶け合ってゆく。
重なりあったそこから、じわりと別の感情が生まれた。
はじめて感じるそれが、律動しながら全身に浸透する。
痛みは次第に熱へと変わっていた。
反射的に閉じてしまっていたまぶたをあげ、燃えるようなその瞳に雪を映す。
月夜はあの笑みを浮かべる彼を見つめていた。
――やっと、本当のあなたに逢えた。
月夜はその瞬間、熱くたぎる衝動を雪の中に放った。
――あああっ…!
彼の心に飛び込んだ月夜は、そこに自分への不思議な感情があるのを見つけた。
父親のようで、兄弟のような、けれどそれよりももっと深い絆が満ちている場所。
そっと触れてみると、暖かな風が吹き抜けた。
思わずうっとりするような優しい温もりに、月夜はなぜか泣きたくなる。
胸が、今までにないくらい締めつけられた。
――ずっと、そんな風にボクを見ていたのか? あの霊山でひとり、あなたは…。
切なく胸に迫る想いを堪えきれず、ひとつになった二人の身体を月夜は抱きしめた。
どうしたらいいかもわからず、ただ強く強く自分を掻き抱く。
そうすればするほど、まるで抱き返されているように思えて、心が安らいだ。
このまま溶け合っていられたなら、離れずにいられるなら、きっともう、あの孤独を思い出すこともない。
――あなたが……欲しい。
強烈に沸き上がったその思いに、月夜は思わず仰け反った。
式を調伏したときのような、強い摩擦が起こる。
雪の魂が、月夜の中を掻き回した。
耳許でささやかれる甘やかな旋律に、緊張が緩み力がほどけていく。
――そうだ。自ら望んだことだ。ボクが信じなければ、彼を受け入れられない…。
二人の姿が自然とひとつに溶け合ってゆく。
重なりあったそこから、じわりと別の感情が生まれた。
はじめて感じるそれが、律動しながら全身に浸透する。
痛みは次第に熱へと変わっていた。
反射的に閉じてしまっていたまぶたをあげ、燃えるようなその瞳に雪を映す。
月夜はあの笑みを浮かべる彼を見つめていた。
――やっと、本当のあなたに逢えた。
月夜はその瞬間、熱くたぎる衝動を雪の中に放った。
――あああっ…!
彼の心に飛び込んだ月夜は、そこに自分への不思議な感情があるのを見つけた。
父親のようで、兄弟のような、けれどそれよりももっと深い絆が満ちている場所。
そっと触れてみると、暖かな風が吹き抜けた。
思わずうっとりするような優しい温もりに、月夜はなぜか泣きたくなる。
胸が、今までにないくらい締めつけられた。
――ずっと、そんな風にボクを見ていたのか? あの霊山でひとり、あなたは…。
切なく胸に迫る想いを堪えきれず、ひとつになった二人の身体を月夜は抱きしめた。
どうしたらいいかもわからず、ただ強く強く自分を掻き抱く。
そうすればするほど、まるで抱き返されているように思えて、心が安らいだ。
このまま溶け合っていられたなら、離れずにいられるなら、きっともう、あの孤独を思い出すこともない。
――あなたが……欲しい。
強烈に沸き上がったその思いに、月夜は思わず仰け反った。
式を調伏したときのような、強い摩擦が起こる。
雪の魂が、月夜の中を掻き回した。

