雪月繚乱〜少年博士と醜悪な魔物〜

「だが救えなかった。だから白童も共に取り込んでやったのだ」

 その瞳の輝きは、十六夜のそれとは違っていた。

「なん……っ」

「白童には、我ら王族とて知り得ぬ膨大な知識がある。彼さえ意のままにできれば、国の行く末も有利に運ぶというもの。実際、そなたが鍵と知ったのも白童のおかげであるからな。あとは、邪魔が入らなければうまくいったものを……」

「十六夜――」

 月夜は確信していた。
 なにに意識を奪われたとしても、自分と同じ白童(おや)に育てられた十六夜なら、必ずや抗おうとするはず。
 白童とて抵抗したであろう。
 だから術を退けた反動で命まで落としてしまった。
 その後十六夜は、どれほど苦しんだだろう。
 白童を手にかけた自分ではない自分を、ずっと独りで抱えていたのだから。

「では、国の……統一を企てたのは――?」

 月夜は震えそうになる声で、十六夜に問う。

「それはどちらも望んでいだことだ。余はただ、それを現実のものにしようとしたまで。頭で思っているだけでは、望みなど幻にすぎぬからな」

 何ということか。
 月夜は恐怖にうち震え、僅かに十六夜から身を退けた。
 何らかの理由で、兄の冥蘖に術をかけた十六夜は、それに失敗し二人の魂が入り交じった。
 同時に二人の意識も――。

「貴方は……冥蘖様、なのですか? それとも……」

 十六夜が立ち上がる。
 月夜は祈るような気持ちでそれを見ていた。

「余にももう、どちらかわからぬ……ただ。ときおり無性に……そなたが……」

 十六夜は涙を流していた。
 泣いている自分に気づいていないのか、それを拭おうともせずにゆっくりと月夜に手を差し出す。