雪月繚乱〜少年博士と醜悪な魔物〜

「そなたは疑い深いの。余は確かにそなたの知る十六夜……幼き頃から一緒に育った仲であろう。元服までの刻、実の兄である冥蘖よりも兄弟らしく、実の親よりも親らしい白童に教えられ、二人で後宮を駆け回ったな」

「それは……」

「心配はいらぬ。余はそなたの命まで奪うつもりなどない。ただ、傍にいてくれさえすればよい。余の隣で、余が世界を統一する瞬間をその目で見届けるがよい」

 世界を統一するということは、やはりふたたび四神の国が争うということだ。
 しかも1000季前、朱雀帝が和平を望んだこととは逆に、十六夜は神を使い、力で世界を支配しようとしている。

「ダメだ……どうして、なぜ世界を統一なんて。このままで、神なんていらない……いまのままじゃダメなのか?」

「そなたもわかっておろう。ガルナを守護してきた神を奪おうとする者がおる。しかしそなたが余の力になってくれるのであれば、恐れることはない。そなたがいれば、余も恐れるものなどなくなる……余のモノになれ。その魂を捧げよ。王族の血を受けた、限りなく神に近いその魂を――」

 地が強く振動した。
 月夜は自分の身体が震えたのかと思った。
 だが、にわかに外が騒がしくなり、次いで部屋の扉が叩かれた。

「月夜様! 大事でございます。ふたたび侵入者が……!」

「来たか……月夜。もう余はそなたを逃がさぬぞ。そなたが嫌だと云うても、これはどうにもならぬことなのだ」

「ま、待て……さっきの、王族の血を受けた、とはどういう……」

 十六夜が、冠に手をかけた。
 月夜が止める間もなく、それが床に落ちる。
 その瞬間、十六夜の仮面はすべて剥がされてしまった。

「……まさか……」

 はじめて見せられた素顔の十六夜に、月夜は蒼白に染まった。