雪月繚乱〜少年博士と醜悪な魔物〜

「だ、誰が……ボクを? なぜガルナに。十六夜は知っているのか……!」

「教えてやってもよい……その代わり、余の望みを受け入れるか?」

「望み……?」

 淡々と口を開く十六夜を、月夜は訝しげに見返した。

「……余のモノになれ」

 月夜はビクリと肩を震わせた。
 同じ科白を、もう何度云われたことか。
 なぜ今、ふたたび今度は十六夜が口にしているのだ?

「な……なに戯言を――」

「戯言? 余が戯言でそのようなことを口にすると?」

 十六夜の酷薄な視線が、月夜の胸を射した。

「そん……な、でも……じゃあ、どういう意味で……」

「意味? そなたが余のモノになるという意味なら……」

 とん、と身体に衝撃が走る。
 床に背中を打ちつけた月夜は、瞠目した。
 見上げたその、顔布の下からのぞいた口許に、嬉々と浮かぶ笑み。
 ゾクリと背中が冷たくなった。

――十六夜?

「こういうことだ」

 高々と挙がった腕が、月夜の胸めがけて降り下ろされる。
 その瞬間、感じたことのある感覚に全身が包まれた。

「あ……あっ……」

 稲妻に打たれたように、身体中が重くしびれて動けなくなる。

――まさか、これ……!

 魂が身体から離れていくのを、月夜は覚悟した。
 まさか十六夜が、自分に術をかけるなど想像もしなかった。
 けれどなぜ、そんなことをしようとするのか?
 混乱する今の月夜には、推しはかることすらできない。

「いざ……よいっ」

 月夜のうめく声に構わず胸をわし掴む手が、魂までも掴んだ。

「ふ……ぁっ……っ」

 首を降り抗うが、十六夜は止めようとはしない。
 もう、月夜にはどうしようもなかった。