雪月繚乱〜少年博士と醜悪な魔物〜

「な、なに見てる……っ」

「お前……面白いな」

 月夜の額に青筋が浮いた。

――面白い面白いって、こいつボクを馬鹿にしてるのか!

「お……っ」

「お……?」

 月夜も負けじと、雪の弱味を突こうと頭をめぐらせた。

「お前こそ、なんだったのだあれは?」

 雪はキョトンとして自分を見ている。
 なにやら云おうとしているこちらが、気恥ずかしくなった。

「かっ、神を追い返してくれたことには礼を云うが、そのあとだ! 眠いとか云っていきなり寝てしまうし、起きたかと思えば中身は阿修羅で、ボクの顔を――」

「お前の顔を?」

 雪が繰り返す。
 この男には羞恥心というものがないのか?
 ただじっと月夜の目を覗き込んでくるので、思わず顔が赤くなる。

「お前は……面白くないっ!」

「……面白く……ない」

 なぜか、最後のその言葉に雪は反応した。
 見ると、無表情のままで酷く落胆した顔をしている。

――なぜだ。面白くないのがそんなに嫌なのか?

 魔物のくせに、そんなことにこだわるとは――月夜は、一瞬ゆるんだ口許を、すぐにきゅっと結びなおした。

「お前も、さっさと消えろ! ボクは忙しいんだ。お前などにかかわっている暇は――」

 云いながら雪に背中を向けた途端、背後からきつく抱き止められた。
 月夜はギョッとして身体を固くする。
 絡みつく手が、衣服の上から月夜の魂をわし掴んだ。
 ドクンと胸が震えた。

「な、なにをしているっ、離せ馬鹿!」

 雪は無言で、ますます腕に力を込めてきた。
 力では敵うはずもない相手に、月夜は懸命に抗う。

「まさかお前、また阿修羅と入れ変わったわけではないだろうなっ」