雪月繚乱〜少年博士と醜悪な魔物〜

――知っている……その、忌み嫌われることの云い知れぬ孤独感。

 帝の側使、白童に育てられながら、月夜はその素性からたびたび迫害をうけた。
 けれど、月夜には白童はもちろん十六夜がいた。
 彼らは決して、容姿や出生の違いから月夜という存在を判断したりはしなかった。
 イシャナには、そういった支えはなかったのだろうか?

「いったい……誰がお前を神の子などと?」

 イシャナは躊躇うようにうつむいて、ようやくと口を開いた。

「ナーガの神官……王の側近で、俺の……母です」

 その瞬間、月夜にはある想像がめぐった。
 ナーガの王も、はじまりの神の子孫である。
 その側近であるならば、王の子を宿す可能性は大いにありえる。

「イシャナ……お前はナーガ王の……」

「俺は生まれてすぐ、王宮から遠い場所に移されて、何も知らずに育ったんです……母の使いが来るまでは」

 ポツリポツリと話すイシャナを、月夜は複雑な思いで見つめていた。

「けど俺が呼ばれたんは、母が子に逢いとうなったからやない……王には王女しか生まれへんかったからです。”人間の男”は俺ひとりやった……月夜様……ナーガは呪われとるんですよ。ナーガの王族には滅多に男が生まれない……いや、生まれてくるのは男やない。男の姿をした魔物や……せやから、生まれてすぐに王宮からは遠ざけられる。どうせ長生きもできひんのに……」

「長く……生きられない?」

 訊かされたナーガの実情に茫然とした月夜が、辛うじて声をあげた。

「……生まれた男は、大抵すぐに病で死ぬ。生き延びてもいつか魔物となって人間を襲うようになる。どっちにしろ、唯一子孫を残せる手段でありながら、その性ゆえに畏れられる異質な存在なんですよ」