雪月繚乱〜少年博士と醜悪な魔物〜

「魔物の……」

 月夜は声に出してすぐ、口をつぐんだ。

「怖がらんといて下さい……この目は生まれつきで、俺が人間やない証……やけど、神魔でもない証なんです」

「それは、どういう……」

 イシャナは哀しげな顔をして、微かに笑ってみせる。

「そのまんまの意味です……俺は、人と神の間に生まれた、できそこないなんですわ」

 突然、心臓をわし掴まれたような痛みが走る。
 それ以上訊くことを、なぜか身体が拒絶しているようだ。
 脚がカタカタと震えていた。

「なにを……云っている。お前が……神の子? 誰がそんな、突拍子もないこと……」

「月夜様になら俺……気づいて貰える思てましたんや……髪や目の色は誤魔化せても、どこか違うこと……きっと気づいてくれるはずやて、月夜様と逢うてからずっと……」

 確かに、彼の存在はガルナのどこにもない違和を感じさせる。
 しかしそれは、言葉や人種の違いからくるものなのだと認識していたのだ。
 それを神の子だからとか云われて、そうだったのかと納得できるわけがない。
 だいたい、どうして自分がそんなことに気づくと考えたのだ?
 月夜は無意識の焦燥にかられた。

「そんなこと……云われても、わかる訳がない……信じられる訳、ないだろうっ」

「そうかもしれへんです……俺かて、自分が神の子だとか云われても……いまだ半信半疑のままで……髪と目の色以外、人と違うことなんぞ、どっこもあらしまへんのや! せやのに……なんで皆、そないな目で俺を見るんや――」

 イシャナの瞳にも、焦燥が滲んでいた。
 人と違うというだけで迫害された、哀しげな色を湛えて。
 胸の痛みが募り、鼓動は激しく打ちつけた。