雪月繚乱〜少年博士と醜悪な魔物〜

 そんな無慈悲な神など目覚めさせて、十六夜は本気で国を守れると思っているのか?
 月夜は、先から疑問に思っていたことを再度考えはじめる。
 閉じ籠ったままの十六夜からは、なんの答えももらえない。
 このままでは、神が再臨したときの手立てがない。
 魔物を相手にさせたとしても、いずれは突破されるのは想像がつく。
 なんせ相手は万能の神なのだ。
 神は神にしか……。

「――そうか。だから十六夜は」

 いまやっと、その答えに近づいた気がした。
 だが、仮に神同士を戦わせられたとして、ガルナ自体無事ではすまないだろう。

――あの時のことを思えば、今度こそ国を…大陸ともども滅ぼされかねない。

 宮の半分が滅茶苦茶になった、魔物と神の衝突。
 それ以上のことが起きるところを想像し、思わず背筋が寒くなる。

「それとも、十六夜にはなにか策でも……?」

 そうだ。そうでなければ、こんな無謀な賭けに国の命運を任せることなどできるはずがない。
 月夜はふと顔をあげた。
 負傷した月読に食事を運び、自分もやっと僅かな保存食と水を口にして、交代制で見回りをすませたあとだった。
 幸い宮の蔵は無事だったが、かまどが壊れたために、満足に調理のできないなか、宮の中にもかかわらず野営がしかれている。
 帝の宮殿に被害が及ばなかったのは、奇蹟にも等しかった。
 なぜならそのすぐそばで、あれらに暴れまわられていたのだから。
 月夜は何気に視線を向けた場所へ脚を運んだ。
 松明の紅い炎が、陽が落ち薄暗くなった空を黒く焦がしている。
 野営のなかを点々と続くそれをくぐり抜け、真っ直ぐに宮殿へと向かった。

――のんびり考えている暇はない。決断しなければ……。