――まさか…近くにいるのか? 魔の…。
月夜は一瞬の間、周囲に神経をとがらせた。
もしもそうなら、集中するいま出てこられるとまずい。
たとえ弱い相手だったとしても、二体同時に相手をするのは、今の状況では厳しい。
瞬きを二度する刹那に、月夜は判断しなくてはならなかった。
この精霊をあきらめて、近くにいる魔属性の精霊を調伏するか?
おそらくそちらを選んだ方が、いくらか分はある。
だが、月夜はくちびるを噛みしめた。
――ダメだ! 魔属性では…神じゃないと…あの人と同じ、神の式でなければ…!
月夜はかまわず目の前の精霊に全精力を注いだ。
はやく、もう一体が現れる前にはやく!
大きな翼をバタバタと羽ばたかせはじめた精霊が、苦しみから逃れるように飛び立とうとしていた。
逸る気持ちに突き動かされた月夜は、思わずそれをつかもうとして近寄り過ぎてしまった。
「……っ!」
翼から放たれた霊力の風が、まともに月夜の身体を打つ。
激しく痺れるような衝撃が走ったかと思うと、全身を恐ろしいほどの痛みが襲った。
「うわぁぁっ!」
ガクンと膝をつきながら、辛うじて意識を手離さずにいた月夜は、直後最悪な状況に目を瞠った。
集中するあまり気づくのが遅れたが、すぐ背後にそれは迫っていたのだ。
紛うことなき魔属性、闇の精霊は、巨大な狼のような姿をしていた。
その大きな爪が、月夜の上に振りおろされた。
「しまっ……」
なにもかも、すべては遅すぎた。
防ごうにも、不意を突かれ身体さえ反応できず、あまつさえその精霊も、鋭い爪にかなりの霊力を秘めているのが月夜にはわかった。
――ボクは、死ぬのか…?
固く握りしめていたアンアラの札は、その手の中ですでに燃え尽きていた。
絶体絶命。
一瞬にして突き落とされた絶望に、月夜はただただ大きな赤い瞳を見開いた。
月夜は一瞬の間、周囲に神経をとがらせた。
もしもそうなら、集中するいま出てこられるとまずい。
たとえ弱い相手だったとしても、二体同時に相手をするのは、今の状況では厳しい。
瞬きを二度する刹那に、月夜は判断しなくてはならなかった。
この精霊をあきらめて、近くにいる魔属性の精霊を調伏するか?
おそらくそちらを選んだ方が、いくらか分はある。
だが、月夜はくちびるを噛みしめた。
――ダメだ! 魔属性では…神じゃないと…あの人と同じ、神の式でなければ…!
月夜はかまわず目の前の精霊に全精力を注いだ。
はやく、もう一体が現れる前にはやく!
大きな翼をバタバタと羽ばたかせはじめた精霊が、苦しみから逃れるように飛び立とうとしていた。
逸る気持ちに突き動かされた月夜は、思わずそれをつかもうとして近寄り過ぎてしまった。
「……っ!」
翼から放たれた霊力の風が、まともに月夜の身体を打つ。
激しく痺れるような衝撃が走ったかと思うと、全身を恐ろしいほどの痛みが襲った。
「うわぁぁっ!」
ガクンと膝をつきながら、辛うじて意識を手離さずにいた月夜は、直後最悪な状況に目を瞠った。
集中するあまり気づくのが遅れたが、すぐ背後にそれは迫っていたのだ。
紛うことなき魔属性、闇の精霊は、巨大な狼のような姿をしていた。
その大きな爪が、月夜の上に振りおろされた。
「しまっ……」
なにもかも、すべては遅すぎた。
防ごうにも、不意を突かれ身体さえ反応できず、あまつさえその精霊も、鋭い爪にかなりの霊力を秘めているのが月夜にはわかった。
――ボクは、死ぬのか…?
固く握りしめていたアンアラの札は、その手の中ですでに燃え尽きていた。
絶体絶命。
一瞬にして突き落とされた絶望に、月夜はただただ大きな赤い瞳を見開いた。

