折原、は。

その名前はイコール、完璧な女の子に結び付いてて。

成績トップだわ、すっげ清楚系美人だわ、走るん速いわ絵は賞とるわ、もう全部揃ってんの。

高嶺の花っつー言葉そのもの。

…だから、な。
まさか付き合ってくれるなんて思いもしなかった。

俺と。折原が。俺、と。


俺なんてイコール、折原の真逆みたいなモンだし。素行不良だし、先公からも嫌われてるし、いっつも補習引っ掛かってるし。

授業はサボってばっかだった。

でも折原の斜め後ろの席になってからは、ちょっと真面目に出るようになった。

斜めにたどった先に見える、ポニーテールに結わえられた髪。

授業なんか全く集中出来てなかったけど、俺はその髪が風に揺れるのを、こっそり見てた。…や、けっこーガッツリ見てた。


真逆の折原と俺が、話す機会なんて全くなくて。

俺が折原を好きだなんて知れたら絶対爆笑されるから、ダチにも言えなくて。


だからあの日。
放課後。教室の中に一人ぽつんと残る折原を見つけた時。

俺は本気で、なんかのドッキリか冗談かと思ったんだ。