手をつなぎたい。触ってみたい。笑った顔が見たい。

その全部が続く先。

俺がもうずっと憧れで憧れで好きで好きで好きで仕方なかった女の子。


折原は、一週間前から俺の彼女、だ。


「あっ、会田くん!もうすぐ花火始まるみたいだよ」


涼しいはずの夕方も、腹に、背中にとぶつかる人で蒸し返るように暑い。

まだかまだかと数えてた、地元の花火大会の当日。

いい天気だった昼間の青空を、そのまま黒く塗っただけみたいに、雲ひとつない夜空。

付き合い出してはじめてのデートが花火大会とか、ベタすぎるかもしんねーけど。

折原は、浴衣を着てきてくれていて。

しかもそれが俺好みの朝顔の紺だったもんだから、俺はさっきから折原を直視できない。似合いすぎっつか可愛すぎだろ殺す気ですか俺を。


「あのね、会田くん」
「…へ、な、なに」
「花火大会、誘ってくれて嬉しかった。昔お兄……えと、家族と、行ったっきりだったから」


ごくん、と喉が変なタイミングで鳴った。

つまりその、家族としか行ったことないってことは。俺が。花火大会に一緒に行った初めての男ってこと。

折原の、初めて。そんなことがどうしようもなく嬉しい。

そんな気持ち悪い自分が、死にそうなくらいこそばゆい。こそばゆくてやっぱり嬉しい。ほんと、アホだ。