綺麗に並べられたものを壊したり。破いたり。

人間には、そういう行為を快感に思う破壊的衝動というものが備わっているらしい。

その衝動が、俺は他のやつらよりも少し強いのかもしれない。

そして。彼女と会っている時には、それはさらにもう少し色濃く。





「コーヒー、入れるね」

すくっと立ち上がり、一人キッチンへと向かうミィを見送る。

綺麗な歩き方。さっきまで俺の隣で熱の上った顔をしていたくせに、少しもペースを乱さないその振る舞いに、少し苛立つ。

ヤカンを火にかける手つきはとても慣れていて、主婦みたいだ。まだ高校生のくせに。

ミィは本当によく働く。コーヒーの粉の場所なんて、家主の俺の方が知らない。


「ねぇ、豪くん」


ヤカンの水が沸騰するのを待ちながら、ミィが俺の名前を呼ぶ。

爪先立ちになって、少しだけ浮いた踵。真っ黒な靴下は、ミィにはあまりあわない気がする。


「あー?」
「あたしね、髪短いの…似合うと思う?」