パァン、と弾ける音のあとに、数人の歓声が上がった。

どうやら、誰かが近くで打ち上げ花火をしているらしい。


でもわざわざ見にベランダに出たりだとか、そういうことをする気はなかった。

疲れたわけじゃないけれど、気だるい。行為の後は、大抵この倦怠感に襲われる。

けれど、この感覚は心地がよくて嫌いじゃない。

パァン、と、また同じ音が弾ける。その音に、そういえば一週間ほど前に花火大会があったなと思い出す。


「…この前、」
「花火大会でしょう?近くであったね」


俺が一言落としただけで、彼女が言葉の先を紡いだ。

腕の中にある体温。
顎を撫でるように触れる髪。

すぐ耳元で発される声は、いつもと違って聞こえる。


「夏樹は行ったことある?花火大会」
「……あんまし」
「ふふ、出不精だよね。夏樹、名前に夏が入ってるのに」


冬ごもりばっかしてるもんね。からかい口調にムカついて背を向けると、後ろからそっと抱き締められた。