「思い出せなくても、あなたなら大丈夫よ。ちゃんと守ってくれる」 こういう、妻のひと言ひと言が、別れの時が近いことを知らせている。 俺はどうしたい? 妻を安らかに眠らせてあげたい? それとも、このまま…― 「キスして」 ―…その言葉で、俺の心は決まった。 頭の中で、何かの糸がプツンと切れる音を聞いた。