「あの……」
何か言わなくては、と思ったら。
渚が先に口を開いた。
「でも、コウくんも守ってくれたよね。
ありがとう」
「えっ?」
「ぎゅってして、かばってくれた」
そうだっけ。
あぁ、迦楼羅の火炎地獄の事か。
必死だったから、冷静に思い出そうとすると時間がかかる。
「別に……その後、逆に助けられたし。
あの炎を消したのは……お前だろ?」
「そうみたい……必死だったから、よく覚えてないけど」
「はは、同じだな」
俺が笑うと、渚も微笑んだ。
なんだか、何年ぶりかで笑ったような気がする。
「結局、助けられたのは俺だな。
ありがとう」
「そんな……私、本当に役立たずで……」
「そんな事ない。
怖かったのに、俺達を守るために飛び出してきただろ。
お前、勇気あるよ」
な、と頭をなでてやると。
渚はふにゃりと、笑った。
それを見て。
俺は、意識を失う直前の事を思い出した。
きっと、泣いていたのは渚だったんだ。
自分を守って、誰かが傷つく。
そんなの……俺なら、耐えられない。
渚は何とかしようと、あの温かい霊力で、俺達を癒してくれたんだ。
「ごめんな……御津家の子孫が、こんなに頼りなくて」
思わず言ってしまうと。
渚は首がもげるかというくらい、勢い良く横に振った。
「私こそ、龍神なのに、こんなんでごめんね」
その声には、涙がにじんでいた。



