「……おい」



上体を起こすと、鈍い痛みが全身を襲う。



「くっ……」


「ん……ふわっ!」



腹の重み……多分付き添っていて寝てしまったのであろう渚の小さな頭が。


俺の声で起きてしまい、慌てて飛び起きた。


その瞬間。



ごちっ!!



「~~~っ!」


「ふわぁ!ごめんなさい!」



起き上がった勢いで、渚の頭が俺の額を直撃した。


渚自身も頭を押さえ、涙目になっている。


その髪は銀色、瞳は青に戻っていた。



「アホか……っ。
いてぇ……」


「どこが?頭?胸?背中?」


「全部だよ……」


「はい、わかりました」



何がわかったんだ。


聞く間もなく、渚は体ごと、至近距離に近づいてくる。


そして、俺の頭を両手で包んで、顔をのぞきこまれた。


渚の手のひらが、前髪を持ち上げる。


まるで、キスをするような距離で。



「な……っ」

「大丈夫……」



一気に頬が熱くなり、慌てる俺を無視して。


渚は、その桜色の唇を、俺の額に押し付けた。



ひィィィィィ!!

何だこりゃああ!!
やわらけぇし、いやいや、そうじゃなくて!

ど、どうすりゃいいんだ!?



突然の事に、女の子に免疫のない俺はパニクってしまう。


しかし、すぐに。


その唇が触れたところが、何とも言えない温かみを感じた。


痛みが、なくなっていく……。




完全に額の痛みがなくなった頃、渚はようやく顔を離してくれた。


うつむく彼女は、唇だけでなくその頬まで、桜色に染まっていた。