「何者だ」



もう一体が、地獄の底から響くような低い声で、俺達に問う。


それは九尾の狐より、二回りくらい大きな身体をしていた。


重力に逆らい、天をつく髪。


赤黒い肌に、血のような赤い目。


鎧をつけ、その背には……。


黒い翼が、生えていた。



「我は、迦楼羅(カルラ)と申す。

人の子よ、名を名乗れ」


「迦楼羅……天狗かよ。

意外と礼儀正しいじゃねーか」



健太郎が言う。


その声は、少し震えていた。



「あっ、ちなみに私は妖狐(ヨウコ)の玉藻(タマモ)。

まぁ、もっとも……生きて帰り、この名を口にする事はないでしょうけど」



九尾の狐……玉藻は、ふふ、と妖しく笑った。



「面白い武器を持ってるじゃない。

早く、名乗りなさい」



威圧感のある声で言われ。


覚悟を決め、最初に俺が口を開いた。



「……三剣士が一人、御津恒一」


「同じく、柏原雅」


「同じく、西条健太郎!
覚えとけっ、妖ども!」



最後の健太郎の言葉に、玉藻はまた笑う。


迦楼羅はほう、とうなずいた。



「三剣士が、この時代に蘇っていたか……」



実は、龍神の姫も蘇ってるんだけど。


ちら、と背後を見る。


渚の姿は見えない。


どうやらうまく、姿と気配を消しているようだった。