小学校の裏山に急ぐ。


あの、常人には見えない城に向かって。


真夜中だからか、町に人はいない。


空亡のせいで空は厚い雲に覆われたまま、

月明かりもない暗闇を、俺たちは走っていた。


その時……。



「きゃあっ!!」

「!!」



突然、俺たちの足元が揺れだした。


地鳴りの音と共に、地面は振動し、

俺たちが先に行くのを、妨害する。



「地震!?」

「こんな時にかよっ!!」



俺は渚の身体を支えるのに、精一杯だった。


立っていられないほどの縦揺れが、しばらく続いた後。



「おさまったか……?」



周りを見渡す俺たちの目に、信じられない光景が映った。



「コウくん、あれ……!」



渚が緊張した声を出す。


彼女が指差したのは、海の上の空だった。


そこに。


夜空よりも黒い、巨大な渦が、

空亡が、存在していた……。