「夢じゃないよね……?」
小さな声が、鼓膜を震わせる。
「何が……?」
「コウくん、私のこと……」
「……好きだよ」
「……ふわあぁ……」
囁くと、渚は龍神のくせに、ゆでダコみたいになった。
そして、自分の手で顔を隠す。
「なんだよ」
「う、嬉しい……」
……最初は全く、信じなかったくせに。
でも。
嬉しい。
そう言って、恥じらう渚を。
何より、愛しく思った。
「……顔、見せろ」
手をどけると、何とも微妙な表情が、そこにあった。
笑いそうな、涙をこらえているような……。
「嫌われたかと、思ったの……」
「えっ?」
「本当の姿、見られちゃったから……」
本当の姿。
青い、巨大な龍の姿。
「あぁ……。でかくて長かったな」
「そ、それだけ?」
「龍なんて初めて見たから、驚いた。
……それくらい……かな?」
「ひかないの?」
「ひかないよ。
てか、お前ちょいちょい、変な現代語出てくるな……」
よしよし、と頭をなでると。
渚は笑った。
泣きそうな顔で……。



