こんなことしてる場合じゃないよな……。
だけど、こんな時間が一秒でも長く続いてほしいと思うのは。
俺の、わがままかな……。
手は、その柔らかな髪をなで……。
唇が、無意識に彼女に口づけた。
「!」
俺の下で、渚の身体が跳ねた。
さすがに、気づいたか。
顔を離すと、渚が目を開けて、こちらを見ていた。
真っ赤な頬で……。
「い、今……」
「なに?」
「した……?」
「何を?」
意地悪く言うと、渚は「ぶぅぅ」と頬を膨らませた。
「キスしたけど。悪い?」
「な、なにそれ……。
コウくん、キャラ違う」
「キャラってお前、どこで覚えたんだよ」
吹き出してしまうと、渚もつられたのか、ニヘラと笑った。
「俺、意外とSかも」
ちょっと、いじめるのが楽しい気がする。
もちろん、他の人間にはあまり思わないけど。
「えす?」
「あー……。
覚えなくて、良いよ」
とにかく、この体勢はヤバイ。
完全に、押し倒した感じになってしまっている。
身体を起こそうとすると、何かが首に巻きついた。
それは、渚の細い腕だった。