「本当に?本物のコウくんなの?」
「そうだよ……よく見ろ」
「見えないよぉ……」
確かに、涙でぐしゃぐしゃの目は、視界がぼやけているんだろう。
その背中に手を回そうとするが、格子が邪魔で、うまくいかない。
もどかしくて、一旦身体を離した。
「出してやるから……離れろ」
リカさんの剣を構え、雷で格子を吹き飛ばそうとする。
そんな俺に、渚は慌てふためいた。
「ままま待って!
それ、お姉さまの剣でしょ!?
それだと、私も吹き飛んじゃう!」
「えっ」
そうなのか。
持って間がないから、加減がイマイチわからない。
「私が、やる……
結界があるの。
今、破るから……」
「できるのか?
お前、力が……」
力が弱くなりすぎて、あの時玉藻に抵抗できなかったはず。
心配で見つめると、渚はもう一度、こちらに手を伸ばした。
「手……にぎってくれる……?」
「……?こうか……?」
その小さな手を、左手でにぎる。
すると、渚は頬を染めて。
ふにゃりと、笑った。
「……今なら、何でもできそう……」
嬉しそうに微笑むと。
渚は、意識を集中しはじめた。



