夢の中……。
目の前で、映画を見ているようだった。
忠信は、なんとも優しい瞳で、渚を見つめた。
そんな忠信を、渚も見つめ返す。
その大きな瞳は、まるで太陽の光を反射する海のように輝いていた。
そして……。
忠信は、渚の体に優しく腕を回した。
答えるように、渚が忠信の胸にすりよる。
「……何だ、これ……」
目の前の、二人が……。
恋人にしか、見えない。
しかも忠信が自分と同じ顔だから、妙に照れてしまう。
待て待て。
お前ら、人間と神だろう?
あり得ない……。
しかし、そういえば。
渚は、言った。
『忠信様は、私と共に生きてくれると言ったのに』
……まさか、本当に……
御津忠信と渚が、デキてたって言うのか……?
まさか。
神が力を捨て、人間になるなんてできるのか?
父なる海神や龍神が、それを許すか?
様々な疑問がわく。
しかし……。
忠信の腕の中にいる渚は。
満ち足りた、人間の女の子の顔をしていた。
忠信さえいれば、あとは何もいらないと。
そう言っているような顔だ。
そんな二人を見ていると、何故か、胸が苦しくなってきた。
もうやめてくれ。
見たくない。
見たくないんだ。
それが自分の気持ちなのか。
あるいは、俺の中にある忠信の血が思っているのか。
俺には、わからなかった。