「……本当だよ……」



否定しても、渚はかたくなに信じようとしない。



「もう、言わないで……」



そう、小さな声で、言った。



「……もし、コウくんに裏切られたら……。

私、今度こそ消滅しちゃう……」


「渚……」


「神は、病気や老化じゃ死ねない。

でも、心の痛みで、死ぬんだよ」



俺に裏切られたら、死んでしまう?


それって……。



「渚……。お前の気持ちを聞かせてくれよ」


「…………」


「俺が、嫌いか……?」



渚は、ふるふると首を横にふった。


多分、俺の言いたい事はわかったんだろう。


だけど、やはり……。



「聞いたでしょ……?


私は、神以外にはなれない。


人間にはなれないの。


一緒にいても、明るい未来なんか、ない。


消滅しちゃいそうな時が、きっと来る。


そうならない前に……海に、帰ります」


……それ以上は……。


何も言えなかった。


健太郎が言った通りだ。


いつかは、離ればなれになってしまう……。


わかってた。


わかっている。


わかってるから……。


もう、何も、言えなかった。