腕から、力が抜けていく。 何も言えなくなった俺に、渚が泣きながら、言った。 「私を、海に、帰して……!」 と。 そのまま突っ伏して泣き出す渚を、雅と健太郎が、何とかなだめようとする。 俺は、何もできず……。 ただ、スローモーションのように思えたその光景を。 視界の真ん中にとらえているだけだった。