家に帰り、着替えようとした時。


部屋の前から、ばあちゃんの声がした。



「恒一、ちょっといいかい」



ばあちゃんが部屋に来る事なんか、滅多にない。


いったい、なんだろう。


俺は制服の上着だけを脱いで、戸を開けた。



「なに?」


「ちょっと、入っていいかい」



と聞きながら、ばあちゃんは勝手に部屋の中に入り、戸を閉めてしまった。



「話がある」


「何だよ、また内緒の話かよ……」


「また?」


「いや、こっちの話……」



俺が勉強机のイスに腰かけると、ばあちゃんは立ったまま話しだした。



「……お前、龍神剣(リュウジンノツルギ)って、姫様から聞いた事があるかい?」


「龍神剣?」



渚に出会ってからの事を思い出してみる。


しかし……。



「聞いた事ないけど……」



龍神剣、なんて武器は聞いた事がない。



「それが?

もしかして、新しい資料か何か、見つかったのか?」



聞くと、ばあちゃんは黙ってうなずいた。



「龍神剣は、千年前、空亡を封印した武器だ」


「……!」



驚きで、言葉を失う。


そんな資料、いつ見つけたんだろう。



「それで、その龍神剣はどこにあるんだ?」


「それが……」



ばあちゃんの言葉の途中。


突然、スマホが震えた。



「出な」



ばあちゃんに言われ、電話をとる。



「はい?」


『恒一か?裏山に、妖発見。

空亡の影響で増長した雑魚だが、数が多い。

応援を頼めるか』


「わかった。すぐ行く」



電話をかけてきたのは、雅だった。