俺は米倉を、廊下に引きずり出した。
「尾野に何を聞いたんだよ」
「渚ちゃんを説得してる途中で、御津くんが乱入してきたって。
野田くんカワイソー。
一回くらい、させてあげれば良いじゃん。
彼氏じゃないなら関係なくない?」
米倉は、しれっとした顔で答える。
「なんて女だよ。
じゃあお前は、野田と一回だけやってくれって頼まれたら、やるか?」
「絶対、イヤ。」
米倉は、キッパリ答えた。
その瞳には寸分のブレもない。
「……ひどいヤツだな……。
じゃあ渚の気持ちもわかるだろ」
「そう言われれば、そうねぇ」
米倉はクスクスと笑った。
「……そういえば、尾野は野田と仲が良いのか?」
「え?」
「告白に付き添ってやるなんて」
「あぁ……別に、仲が良いわけじゃないわ。
英明も、頼まれると断れない性格なのよ」
「へぇ……」
それにしても、何故野田は尾野に頼んだんだろう。
そんなのは普通、他人に知られたくないし、
頼むとしても、本当に仲の良いやつに頼むはずだけど。
いや……本当に仲の良いやつが、あいつにはいないのか……。
思わずため息をつく。
すると米倉が突然、俺に顔を近づけた。
「……御津くん」
「な、何だよ」
「野田くんはイヤだけど……。
私、御津くんならイイよ」
「は?」
「……一回やってみる?」
米倉は、つ、とその白い指を俺の首にはわせた。
心拍数が、急激に上がる。
頬が熱くなり、汗が吹き出した。
「あああああ、アホかっ!」
ぺちっ。
俺は手の平で、米倉の額をたたいた。



