純粋に狂おしく愛してる ー君が私を監禁した理由(ワケ)ー

 3人で床を拭き終わると、マスターはお礼の言葉を口にし、タオルを持ってカウンターの奥へ消えようと、私達に背を向ける。

 すると、桐生さんはそんなマスターに対して「待ってください」……と、口にした。


「俺がタオルを片付けてきますから、マスターはここに残っていてください。……従業員がみんなカウンターの奥に行ったら、客が来た時に対応が出来ません」

「それは、そうだが……」

「ハルカもここで待っていてくれ」


 桐生さんは私の頭を軽くポンッと撫でると、マスターの手からタオルを受け取り、カウンターの奥へと消えていってしまった。

 ……今、この場には、逃げる私を引き止める人は、誰もいない。マスターにちゃんとわけを話せば、私は桐生さんの監禁の手から逃れられるだろう。

 でも……。


 ──「……その時は、篠原さんを、俺のもとから奪おうとする者に危害を加える」

 ──「篠原さんをさらって、人がいない……どこか遠いところで、2人で一緒に暮らそうか」


 私は、誰にも助けを求めたらいけないんだ。私が助けを求めたら、みんな……桐生さんに危害を加えられてしまう……っ?!


 ──「俺にとって大切な場所なんだ。……それこそ、マスターにいくら感謝しても、感謝しきれないくらいだ」


 マスターに助けを求めてしまったら、桐生さんは……おそらく慕っているであろうマスターにまで、手をかけなくてはいけなくなってしまうの……?

 そんなの、ダメ……っ!私には逃げることなんて出来ないっ!