純粋に狂おしく愛してる ー君が私を監禁した理由(ワケ)ー

 桐生さんは横目に私の方を見たかと思えば、小さく笑う。「安心しろ、大丈夫だ」……そう、言われているような気がした。


「司。すぐに頭に血が上るのはお前の悪いクセだ。客の怒りを買うような行動をしているのはお前なのに、客の衿元を掴み上げる馬鹿がどこにいる?」

「それは……っ!俺は、ただ、彼女の連絡先を聞こうとしただけで……」

「俺の知るウエイターは、むやみに客の連絡先は聞かない」

「ぐっ……すみませんでした!桐生センパイ!それと……」


 私の方を向いた司さんに、桐生さんはすかさず「ハルカだ」……と、偽の名前を口にした。


「すみませんでした、ハルカさん!……えっ、ハルカさんっ?!」


 深々と頭を下げて謝ったと思いきや、司さんはすぐに驚いた顔をして私の顔を見た。

 え、な、何っ?さっき、マスターも何かを言いかけていたけれど、司さんもなの?ハルカさんって一体……?


「き、桐生センパイ!彼女、ハルカさんっていう名前なんっすかぁっ?!」


 髪から滴り落ちる水滴を気にもせず、司さんは私を指差しながら、桐生さんにグイッと顔を近付ける。


「人に指を差すな。……ああ、そうだが、何か問題でも?」

「い……いやぁ~……。なんていうか、すっげー偶然っすね!」


 ……偶然?どういうこと?