純粋に狂おしく愛してる ー君が私を監禁した理由(ワケ)ー

 気まずい無言の時間が始まるのかな……と思っていた矢先、桐生さんが口を開く。


「篠原さん。すまない」

「え?」

「君のことを、“ハルカ”だと紹介して」

「いえ、別に……。ハルカさんって、桐生さんのお知り合いですか……?」


 遠慮がちに聞いてみる。すると、桐生さんの肩がピクッと小さく反応した……ような気がした。


「ん……。そんな感じの、人」


 そうなんだ……。女友達とか、憧れの先輩の名前かな?それとも、元カノさんの名前だったりして……──いや、元カノさんの名前のわけがないか。

 仮に、元カノさんだったら、桐生さんに殺されちゃったことになるもの。桐生さんのことだから、私と同じように元カノさんも監禁していたんだろう。

 ハルカさんが監禁から抜け出せて、今も生きているとは……ちょっと考えにくいかもしれない。


「水と手拭きでございます」


 マスターが水の注がれたコップと、手を拭くための布を持って来た。私はマスターに小さく頭を下げ、そして……再び俯く。


「……篠原さんは、今も本田洋佑のことを、……好きなのか?」

「っ?! えっ、そっ、そりゃあ、もちろん……」


 突然の質問に驚いたものの、私は何度もうなずく。そもそも、好きじゃなければ付き合ってなんかいないし。


「そうか。……両親のこともか?」

「はい」


 私のことを、生まれた時からずっと育ててくれたお母さんとお父さん。嫌いなわけがない。