純粋に狂おしく愛してる ー君が私を監禁した理由(ワケ)ー

 素直に名乗ってもいいものかと……どうしたらいいものかと目を泳がせていると、桐生さんが口を開く。


「マスター、彼女の名前はハルカといいます」


 さも当たり前のように、平然とそう言った桐生さんに対し、私は両目を見開かせる。

 ハルカ……って、だれ?というか、どうしてそんな嘘を……?

 私の名前は篠原里桜……──あっ、外ではこの“ハルカ”っていう名前を名乗れっていうこと?

 そっか、もしも警察の方が私を捜しているのだったら、それは“ハルカ”ではなく、“篠原里桜”を捜しているんだものね。私のことを、見付けにくくするためなのかな。

 マスターは、桐生さんの口から“ハルカ”という名前を聞いた瞬間、私と同じように両目を見開かせた。


「“ハルカ”……?桐生くん、確か、前の……──」

「──マスター。コーヒーと……そして、ハルカのためにココアの注文をお願い出来ますか」

「あ……ああ。分かった。席は好きに使ってくれて構わないからね」


 ……?マスター、今、何か言いかけていたような……?


「ハルカ。この席でいいか?」

「えっ? あ、はい……」


 桐生さんに言われた席に腰掛け、そして、俯く。

 こちらから何を話したらいいのか分からないし……変な行動をしたら、桐生さんの怒りを買っちゃうかもしれないから。だから、なるべく大人しくしていようと思った。