純粋に狂おしく愛してる ー君が私を監禁した理由(ワケ)ー

 けれど、今は桐生さんのことを抱きしめ返してもいいんだ。自分が気の済むまで、何度だって抱きしめ返してもいいんだ。

 私達は抱きしめ合いながら涙を流していた。まるで、会えなかった5年分の溝を埋めるかのように。そして、再び出会えた奇跡に感謝するかのように。

 端から見れば“大人が抱きしめ合って泣いているだなんて”、なんて奇妙な光景だって、思われるかもしれない。笑われるかもしれない。

 でも、そう考えると、この道の人通りが少なくて本当によかったと心の底から思う。……まぁ、もっとも、そう思われたり笑われたりしても、私は気にしないのだけれど。

 しばらく経った後(のち)、桐生さんは私の肩に手を置き、距離をおいた。桐生さんは真っ直ぐに私の両目を見つめる。

 少し離れた電灯や、月明かりに照らされた真剣そのものの桐生さんの顔。……私は、とあることに気が付いた。


「桐生さん……その目……」


 5年前に包帯を巻いていた桐生さんの左目には、人間の目が埋め込まれていた。もう包帯は巻かれていない。


「もう、包帯を巻く必要はないと思ったから。だから、お世話になった医者のころに行って、義眼を提供してもらえるよう、お願いしてもらった」