純粋に狂おしく愛してる ー君が私を監禁した理由(ワケ)ー

 何が起こったのか分からない。

 だって、せっかくこうしてまた出会えたのに、出会うことが出来たのに、どうして何も言わずに私の横を通り過ぎていってしまうの……?

 どうして……何事も無かったかのように……無言で……通り過ぎて……どうして?どうしてなの……?

 私は慌てて頭を上げ、すぐさま通り過ぎていった彼の方を向いた。やっぱり辺りが暗くて、姿がハッキリとは見えにくい。けれど、声を聴いて彼だと分かった。

 まさか……声が似ている人、なんてことは無いと思うけれど……。

 分からない。分からなくなってしまった。先程、確かに感じた安堵感も、嬉しさも、今は氷のように凍り付いてしまった。

 大きな不安だけが、私の中をグルグルと掻き回していく。

 彼は……本当に彼なのか?彼だとして、どうして何も言わずに通り過ぎていってしまったのか?分からない。私には分からないよ……っ!

  声をかけたいと思うのに、なんて声をかけたらいいのか分からず、情けなくも金魚の口にみたいにパクパクと動かしてしまう。

 でも、ここで私が行動をしなければ、彼とは二度と会えなくなる気がして……。


「桐生さん……っ!」


 やっと思いで喉から出た言葉。私は彼の背中に向かって、その名前を口にした。