「もういい。何も言うな。篠原さんが無事で……──っ!……まもることが……できて……ほんとうに……よかった……」
途中、桐生さんの言葉が詰まったような気配がした。どうしたのかと思い、顔を上げると、痛みなんて感じないと言わんばかりに、優しそうに微笑む桐生さんと目と合った。
「桐生さん……?」と、名前を呼んだ瞬間、桐生さんはずるり……と、私の腕の中から滑り落ちていく。
滑り落ち、しゃがみ込んた桐生さんの後ろに立っていたのは、血に染まったナイフを片手に持った、ニタリと歪んだ笑みを浮かべる洋佑だった。
しかし、プツンッと糸が切れた人形のように、洋佑はぐらりと揺れてその場に倒れ込む。──それは、洋佑の心臓が活動をやめた瞬間でもあった。
「あ……あ…………あ……」
突然の出来事の流れに、私は目を見開いて情けない声を漏らす。
洋佑が。
最期の力を振り絞って。
桐生さんの背中に。
ナイフを突き刺した。
つき、さした。
その出来事の流れの一連を分かっているのに、私の頭はそれを理解したがらない。
目の前の事実を信じられず、情けない声を漏らしながら視線を忙しなく左右に動かすだけだ。
途中、桐生さんの言葉が詰まったような気配がした。どうしたのかと思い、顔を上げると、痛みなんて感じないと言わんばかりに、優しそうに微笑む桐生さんと目と合った。
「桐生さん……?」と、名前を呼んだ瞬間、桐生さんはずるり……と、私の腕の中から滑り落ちていく。
滑り落ち、しゃがみ込んた桐生さんの後ろに立っていたのは、血に染まったナイフを片手に持った、ニタリと歪んだ笑みを浮かべる洋佑だった。
しかし、プツンッと糸が切れた人形のように、洋佑はぐらりと揺れてその場に倒れ込む。──それは、洋佑の心臓が活動をやめた瞬間でもあった。
「あ……あ…………あ……」
突然の出来事の流れに、私は目を見開いて情けない声を漏らす。
洋佑が。
最期の力を振り絞って。
桐生さんの背中に。
ナイフを突き刺した。
つき、さした。
その出来事の流れの一連を分かっているのに、私の頭はそれを理解したがらない。
目の前の事実を信じられず、情けない声を漏らしながら視線を忙しなく左右に動かすだけだ。



