それは突然のことだった。

 日がすっかりと暮れた頃、自分の家でくつろいでいる俺の携帯電話に、彼女である里桜のご両親から電話がかかってきたのは。


「はい。おばさん、どうかなされ……」

「洋佑(ようすけ)くんっ?!里桜、そこにいるかしらっ?!」


  俺が最後まで喋り終わるより早く、里桜のおばさん……基(もとい)、お母さんである小百合(さゆり)さんは、興奮気味にそう俺に問うた。


「えっ? 里桜っすか? 来てないッスけど……」


 突然の電話の内容に、何が何だか分からなかったけど、俺は正直に答えた。

 今の俺の家には、俺と、俺の両親しかいない。俺の里桜は来ていない。

 何かあったのかを聞こうかと思ったのだが、俺の言葉を聞いたおばさんは泣き声に近い声を発したため、聞きづらい。


「小百合、俺と代われ」


 受話器の向こうの遠い場所からおじさん……基、源二(げんじ)さんの声が聴こえた。

 そして間もなく、おじさんの声が耳元で聴こえた。おばさんと代わったのだろう。


「何か、あったんスか?」


 すかさず、俺はおじさんに何があったのかを問うた。するとおじさんは、いつも以上に低い声で喋り出す。それほど真面目な内容ということなんだろうけど……。


「実は……里桜がまだ、高校から帰って来ていないんだ」

「……は?」


 思考が、停止した。

 里桜が……俺の里桜が……高校から……まだ帰って来ていない、だと……?