「……あの、確認させてください」

「……?」

「私はこの部屋……いえ、家からは出られないし、あなたが出してくれることもないんですね?」

「ああ」

「私が抵抗をしたり、逃げようとしても……それでも、あなたは出してくれないんですね?」

「……ああ」


 私の問いに、彼は怒りもせず、咎めもせず、静かに相槌をうっていく。


「……もし、私が抵抗をしたり、逃げようとしたら……どうしますか? 殴りますか? 殺しますか?」

「……」


 彼の動きが、とまった。


「……。……答えられないということは、やっぱり私を殺すんですね? それなら今すぐに私を殺して下さい!こんな怖い目に遭うくらいなら、私は…──」

「――殺すわけが無いだろう!死なせるつもりなんかさらさら無い!何故愛しているのに殺さなくてはならない?!俺は君を守りたいだけなんだよっ!」


 さっきまで無表情で無関心を思わせる口調だったのに、桐生さんは突如バッと立ち上がり、人が変わったかのようにそう叫んだ。

 私の両目からは、自然と涙が流れ落ちる。恐怖からではない。桐生さんの言葉に、圧倒されたんだと思う。


「むしろ、俺のことが気に食わないのなら、気の済むまで俺を殴ってくれて構わない」


 そう言う桐生さんの右目は、嘘をついていないように見えた。

 ……けれど、出会って間もない桐生さんを、私を誘拐して監禁した桐生さんを、どう信じろっていうの?どこを信じろっていうの?何を信じろっていうの?

 私をこんな目に遭わせたあなたのことなんて、信じられるわけがないじゃないっ!