純粋に狂おしく愛してる ー君が私を監禁した理由(ワケ)ー

 うまくナイフを避けた桐生さんは、1人の男性を上から思い切り殴り付けた。刹那、もう1人の持つナイフが、桐生さんの顔の横をかすめて──。


「なんだ、その目は……っ?!」


 ──桐生さんの左目を覆っている包帯が、はらりと地に落ちた。

 私の位置からは桐生さんの左目の部分は見えないけれど、真っ正面からもろに見たナイフを持つ1人は、顔面を蒼白させた。


「き、気持ち悪ィ……!」


 そんな台詞を吐いたかと思えば、男性は何回も転びながらもどこかへと去っていってしまった。……桐生さんに蹴られたり、殴り付けられて気絶している男性を置いて。

 心なしか、桐生さんの顔を見ている他の人も驚いていたり、顔を青くさせているような気がする。……いや、“気がする”じゃない。本当に驚いているし、顔を青くさせてしまっている。

 これは一体、どういうこと……?


「桐生さん……?」

「……っ帰ろう」

「え?」

「騒ぎが大きくならないうちに」


 落ちた包帯を掴み上げ、左目に当てるように持った桐生さんは、私の手首を掴んで走り出した。

 人混みを掻き分け、ショッピングモールから出ても尚、桐生さんと私は走り続けて……やがて、桐生さんの家の中に入った。