「じゃあ…」


俺は少し口角を上げて笑い、沙和に手を振った。




女に自ら笑いかけるとか…正直ちょっと恥ずかしい。

だけど俺の声が届かない沙和には、文字で伝える言葉以外に伝えられるもの…

あとは表情しかないと思った。


さっきキョロキョロと俺たちの顔を見ていた沙和を見て、

俺はそんなことを無性に思った。


俺が無愛想にしてたら、沙和にはどう映るかな…?

どう伝わるかな…?

どう感じるかな…?




うーん…

難しいな。







「おーい、奏〜!」




向こうから俺を見つけ、手を振る修也たち。

コンビニから帰ってきたみたいだ…


俺は修也たちの元へ足を向ける。





………あ。

沙和に連絡先聞くの忘れた。


歩いている足を止め、食堂の方を振り返る俺。

だけどすぐに前を向き、修也たちのところへ向かった。





食堂にはハルちゃんもいるし…

連絡先聞くのは、また今度でいいや。





また…

会えるかな…?


俺はそう思いながら、修也たちと合流してからも、沙和のことばかり考えていた。