左手を目一杯後ろに投げ出し、今か今かとバトンを待つ。 が、一向にバトンは渡らない。 速すぎたのかとスピードを緩めるも、バトンが渡る気配が無い。 不安になって後ろを振り返ると、第四走者の少年はいやらしい笑みを浮かべてノロノロと走っていた。 美津はもう、オーバーラインの一歩手前まで来てしまっていた。 どうしよう… 涙目で周りを見渡すが、助けてくれる者などいない。 「おい鶴田!スタートダッシュしすぎだよ!」 一番最初に声を発したのは隆史だった。