今まで雪で白く覆われる事が多かった庭はその面影もなく、春のような暖かい陽射しに照らされている。 春が来れば、桜が咲く――。 ふと、男は一人の少女の影を思い浮かべた。 桜が似合う少女を。 「それと…」 「何だ、まだあるのか?」 男は不愉快そうな視線を女に向け、手近に置いていた湯呑みを取った。 「はい。あの方が見つかりました」 男の指から湯呑みが滑り落ち、零れた茶が畳の上に染みを作っていく。