怖かったんだ。
万桜がいなくなるなんて。
何も考えられず、いや、考えることもし
なかった。
現実を受け入れられず、逃げていた。
どうすることも出来ずに。
万桜からかかってきた電話にも出ず、立
ち尽くしていた。
「くっそう。」
窓に投げつけた枕は乾いた音を出し、力
なく落ちた。
そして何度目かの着信。
ゆるゆるとメールを開く。
万桜からのメールは文字が並んでいた。
そこには父親が海外勤務になったこと、
万桜が行かないと言うと信頼している人
の息子がいる全寮制の東京の学校へ転入
すること。
そして、気持ちは変わらないとあった。
『アタシは変わらないよ。
離れても変わらないよ。
だから待ってて下さい。
高校を卒業したら戻ってくるから。』