【番外編】サッカーボールと先輩とアタシ



何も答えず、手を引いて歩き出す。

間に流れた沈黙がまた不安にさせられた
から。

やっぱり万桜は何も言わずにいる。

繋がった小さな手から、伝わるもの。

夏でも冷たいその手が、気分を重く重く
していく。

「………。」

引かれて付いてくる万桜の顔さえ、怖く
て見れない。

意気地無しだ。

何を怖がっている。

悪く考え過ぎかもしれないだろ。

「…潤くん。」

でも、伝わってくるんだ。

万桜の気持ちが。

一緒にいた時間が長かったからこそ、解
るんだ。

やっと俺は、足を止めた。